騒音によるご近所トラブル⑦

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騒音によるご近所トラブル⑦

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ご近所さんの騒音がうるさいんだけど!?
それって、法律的にはどうなんでしょう?
今回は、犬の鳴き声について!
ペットを飼っている方は必見です!

 

犬の吠え声による騒音
前2回では、フローリングの生活音を取り上げました。
今回は、飼い犬の鳴き声による騒音の事例をご紹介します。
飼っている側からすると、可愛くて仕方がないペットも、その周りに住んでいる人はいろんなことで迷惑している場合があります。
裁判例

 

【事例】

隣の土地で、闘犬5頭を飼育していたYに対して、Xは、犬の騒音による損害賠償と、犬の撤去を求めた。
【裁判所の判断】

 

〔判断の基準〕
裁判所が、被害者Xの請求を認めるかどうかは、犬の吠え声が、「通常の人が我慢できる範囲を超えているかどうか」という点がポイントとなります。
裁判所は、今回の事例では、「通常の人が我慢できる範囲を超えているかどうか」判断するために、次の5つの点について、次のように分析しました。

 

①加害行為の性質・程度
Yの飼育する闘犬は、朝・夕の食事時には必ず吠え、それ以外にも朝夕の時間帯を中心に吠えることが多く、時々、深夜にも吠えることがあり、しかも、ときには複数の闘犬が同時に或いは交互に、かなり長時間吠え続けることもある。ただし、元来むやみに吠える性質ではなく、何の原因もなしに吠え続けることもない。

 

②被害の内容・程度
Xの被害は、被害感はきわめて強いが、客観的な被害としては、日常生活の安らぎが乱されており、安眠を妨げられることもあるという程度の主として精神的な被害に止まるものであり、身体的な影響や経済的な被害までは認めることができない。

 

③地域状況
本件土地付近は、閑静な住宅街とまではいえず、かなりの電車の騒音もある地域ではあるが、交通便利な住宅密集地である。

 

④被害回避努力の内容・程度
Yは、Xはじめ被害者に到達する騒音の軽減を図るべく真摯な努力をしたものと評価することは到底できない。

 

⑤その他の諸般の事情
・Xは、Yが闘犬の飼育をする前から本件土地に隣接する土地・建物を所有し、その居住開始時には、闘犬による騒音について知っていたと認める証拠はない。
・以前、Xは民事調停を申し立てたが、Yが闘犬撤去請求を受け入れなかったために不調に終わった。

 

〔損害賠償〕
裁判所は、上記の判断基準の各項目について検討した結果、Yが飼育する闘犬の吠え声は、Xに、我慢できる範囲を超えた被害を与えてきたものと判断すべきとして、Yに損害を賠償する義務があることを認めました。
ただし、裁判で認められたのは、Xが請求していた金額の7.5%でした。

 

〔犬の撤去請求〕
裁判所は、闘犬による吠え声は、Xの我慢できる範囲を超えるものであっても、飼育方法、管理方法、防音方法等の変更により、吠え声の発生や到達を減少させ、被害を軽減することができると判断し、Xの闘犬撤去請求は認めませんでした
※参考判例 浦和地裁平成7年6月30日
この裁判例では、ペットの鳴き声が損害賠償の対象となり得るということが示されました。
被害者側が要求したことのうち、認められた範囲は小さかったですが、様々な事情を考慮した結果ですので、違った状況なら被害者の認められる範囲も大きくなる可能性もあります。
(次回へ続く)
次回は、騒音に関するご近所トラブルの最終回です。